ハタチの若者も泥まみれ!『山田錦発祥のまち』多可町の坂本集落で、老若男女が田植え

2023年6月11日(日)、多可町中区坂本公民館前の田んぼで“『山田錦発祥のまち』で田植え体験2023”が開催されました。

家族連れや町内の子どもたち、友人グループ、東京からの参加者など、約50名が田んぼに集合。
事前予約者は早乙女衣装をまとい、伝統的なスタイルで田植えに励みました。

登紀子ブランド酒と田植えイベント

今回、田植えイベントの舞台になった坂本は多可町中区の集落。
中区といえば旧中町時代※から『山田錦発祥のまちづくり』に町をあげて取り組んできた地域です。
※多可町は2005年、中町、八千代町、加美町が合併。

田植えイベント開催のきっかけは1992年、歌手の加藤登紀子さんが全国ツアーでベルディーホールに来られたこと。
運命的な出会いで、その後30年間、10月1日の日本酒の日に合わせ、「加藤登紀子 日本酒の日コンサート」を開催※することになったそうです。
※「加藤登紀子 日本酒の日コンサート」は、ベルディホールで2021年まで、約30年間続いた。

コンサート開催に盛り上がるなか、聞こえてきたのは「日本酒の日コンサートなんやから、オリジナルの日本酒を作ろう!」という声。
石川県金沢市の酒蔵「福光屋」(中区坂本集落と村米制度でつながりがあった)に相談したところ、「ぜひやりましょう」と二つ返事で引き受けてもらえ、多可町産山田錦を使った「登紀子ブランド酒」が誕生しました。

そうなると、次は「日本酒になるまでをみんなで体感しよう!」と、山田錦の田植えイベントが始まりました。コロナ禍の中止もありましたが、今回で通算25回。町内でも歴史がある催しです。

ハタチを迎える田植え人とMiss SAKE Japan

今回の田植えイベントは『若者にも日本酒を身近に感じてほしい』というテーマで、「ハタチの田植え人」の募集がありました。

ハタチを迎える田植え人

ハタチの田植え人に「田植え、してみてどう感じましたか?」と尋ねると「辛かったなあ」と苦笑い。

「今日みたいに雨が降っていると、ぬかるみも深くって、足が取られて……地元が多可町の中区で、田植えの経験はあったんですけど、大変でした!
裸足で田んぼに入りましたが、それも気持ちいような……気持ち悪かったような……初めての経験(笑)
竹棒のガイドをたよりに、苗を均一に並べて、真っ直ぐ植えていくんですけど、途中で植えた列を振り返ったら『ぜんぜん真っ直ぐちゃうやん!』って感じで……(笑)でも、楽しかった!

ちなみに「ハタチの田植え人」には2024年2月、多可町で開催される「日本酒フェスタ」で多可町産山田錦の日本酒がプレゼントされるのだとか。

初めて飲むお酒は、日本酒フェスタでいただく日本酒! そう決めてます! 今日の田植えが大変だったから、楽しみな気持ちも大きくなりました(笑)」

Miss SAKE Japan

参加者からもう一人、「まったく……話ができなくなりました……」と大きく息をしたのは、日本酒と日本文化をPR するMiss SAKE Japanのメンバー・川上千晶さん(2022年準グランプリ)

「田植えは重労働ですね……植え始めは元気だったのに、田んぼの中程でくたびれて、口から言葉が出なくなくなりました。たった一列植えただけで……(苦笑)昔の人はこうした苦労を重ねながら、作物を育てられていたんですよね。すごい!としか言えません」


「こうして田植えをさせていただき、お酒が米と水でできていること、あらためて感じます。お酒、その一滴、一滴に、お米づくりやお酒づくりに携わる人、その思い、費用、時間が凝縮されているのだな、って。
MissSAKEJapanの一員として、酒米の王様・山田錦と多可町のこと、より味わい深く発信できそうです。ありがたい体験でした」と川上さん。晴れやかな表情でした。

運営は坂本集落が総出

雨の中の田植えだったにも関わらず、老若男女の笑い声が絶えなかった田植えイベント。企画・運営は多可町役場(産業振興課)が行い、坂本集落の皆さんが様々な形で支えておられるそうです。

たとえば、イベントで使われる田んぼ。オーナーさんにお話を伺うと、「田植え当日、田んぼの状態を田植えにちょうどいい感じにするのが、なかなか難しいんですよ」と教えてくれました。

イベントまで畔の草刈りや代掻きなどの作業が必要だし、水かさ、泥の深さ、コースを示すロープ貼り――作業は山積み。また、この日のように雨が降るとしたら、その対策も欠かせません。

さらに、イベント後は田んぼも管理。これらはオーナーさんを始め、坂本営農組合の皆さんが共同でされているとなれば……

「まぁ、でもね。毎年、来てくださるお客さまがおられたり、いろんな話ができたりね、嬉しいですよ。わざわざ坂本まで来ていただくのだから、楽しんで帰ってもらえるよう、集落のみんなで頑張っています」

さらに、品質管理や農薬について、集落独自のポリシーも教えてくれたオーナーさん。

「昨年、山田錦の栽培に関する農薬の規定が改正され、基準が緩んだんです。でも、私たちの山田錦をお酒にしてくれる蔵元さんから『例年通りの栽培方法で』とお願いされたこともあって、ここの山田錦は低農薬、化学系の肥料は不使用(有機肥料のみ)。
苗も、少しだけ仲間から譲ってもらいましたが、ほとんどを私が育てています。すべてJA指定の土と種です。また、この地域は有機JASの無農薬の山田錦も栽培しています

「多可町日本酒フェスタ2023」に向けて

最後に、多可町役場産業振興課の吉田さんにお話を伺いました。

「多可町産の山田錦が、多可町の田んぼで育ち、おいしい日本酒になることを知ってもらいたい――そんな気持ちで運営しています。日本酒はこのお米でできるんだなと、日本酒を身近に感じてもらえれば、と。
子どもたちには昔ながらの手植えの体験を通じて、農業、自然の大切さを少しでも感じてもらいたいですね」

「今回、『若者にも日本酒を身近に感じてほしい』という思いから、ハタチの田植え人の募集を行ないました。
テーマは「20歳の乾杯を日本酒で」。参加者には多可町産山田錦の日本酒をプレゼントします。
こうした若い方たちにも、日本酒に興味を持ってほしいですね

2024年2月には、イベント開催も予定。
「少しづつ、準備を進めています」と吉田さん。

多可町産山田錦を使った日本酒が飲めるイベントとして、『多可町日本酒フェスタ2023を2月23日に開催予定です。
こちらでは、多可町産山田錦を出荷している酒蔵に呼びかけて試飲会を行ないます。同時に、多可町の特産品も販売するので、ぜひ、町内外の多くの人に参加していただきたいです」

手植えで山田錦の稲を植え、山田錦や田んぼのこと、坂本集落、そして多可町の風土を感じてもらう田植えイベント。

最後は山田錦米粉入りドーナツやこんにゃく料理、にんにく、ケーキのふるまいで大賑わい!

坂本集落の皆さん、楽しい一日をありがとうございました。

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取材・撮影