酒米の王様・山田錦を次世代に ~シリーズ「多可町の山田錦」

髙澤さん(多可町中区/中町山田錦部会会長)


父とともに

多可町中区、安坂集落の髙澤です。農業歴は約40年。1町3反の田んぼで山田錦を栽培しています。

米作りに携わるようになったのは、中学生くらいですね。安坂だけでなく、中安田(多可町中区)の田んぼまで手伝いに行きました。

圃場整備後、じゅるい田んぼで歩行型田植機を使いました。土がぬかるんでる場所は機械が沈むんですよ。それを私が引っ張りながら、田植えをした思い出があります。

大学生の時、父に「コンバインで刈ってみろ」と言われてね。初めて乗って動かしたら、なんだか焦げ臭いんですよ。後ろを見たら、藁が詰まってベルトが空回り……慌てました(笑)。

あれ以来、コンバインを使うときは、ワラ流れを気にし、後ろのカッター口より排出されているか、常に見る習慣ができました。

安坂の田んぼ

このあたりの田んぼは、圃場整備※をしてから規模や形は変わりました。しかし、安坂の田んぼは、その名の通り、西から東に安らかな坂で下っています。土壌は粘土質。西側に山並があるので、夕方には陰ってきます。

※圃場整備:農地の区画整理、農道・農業用用排水路等の整備を総合的に行うこと。この地域は昭和62年~平成5年にかけて行われた。

安坂から東へ数キロ行けば、山田穂発祥の東安田集落です。東西に開けて、日照時間が長く、山田錦栽培の適地。ちょっとした距離なんですけどね。地形や土壌って、ずいぶん違いますよ。

髙澤さんの酒米づくり

いま、特別栽培米に取り組んでいます。

一般的な米づくり(慣行栽培)より、厳しい基準で栽培するのが特別栽培米です。農薬を使う回数を半分以下にしたり、肥料に含まれる化学合成の窒素の成分も50%以下にしなければならなかったり、手間をかけています。

毎年気をつけているのは、稲が倒れないかどうか。

稲が倒れると、穂が土について籾が発芽してしまったり、刈り取りのときに小石が混ざるんです。これが酒蔵で精米する時に嫌がられる。

稲穂がお辞儀をするくらいの状態で刈り取れたら、一番です。

刈り取り直前の山田錦は、胸の上まで届くほど草丈が長い。「倒伏前の適期刈り取りが出来るように心がけています」と髙澤さん。

山田錦を次世代に

夏場の暑さや異常気象によって、「今後、山田錦の栽培が難しくなるんじゃないか」という声があります。影響は受けるでしょうけれど、今の品質を確保していくためには、いろんな技術に取り組む必要があると思うんです。

山田錦はね、粒張り(りゅうばり)というんですが、身がプリッとしていて厚みがある。さらに心白※が大きい。この品質を、さらに向上させたいと思うんです。

※心白(しんぱく):米粒の中心部に位置する白い部分。澱(おり)ともいう。でんぷん質で、酒の発酵の基盤。これが清澄であるほど、醸造過程での不純物が減り、酒の透明度と品質が向上する。

これからの課題は作り手を見つけること。安坂集落は私が社会人になるころ、15~16軒の農家がいました。それが、いまは9軒。後継者がいる家は、そのうちたった1軒です。

こういう時代になると、集落単位で考えるのではなく、山田錦を作る若手を増やさなきゃ続かない。知見や技術、伝統を伝える機会を定期的にもうける必要があります。

昔は苗も自分で準備するものだったんですけどね。時間も手間もかかるので、JAから買うのが主流になりました。

来年は、久しぶりに自分が理想とする山田錦を栽培するために、苗づくりからやろうと思ってるんですよ。

多可町日本酒フェスタ2023

と き 令和6年2月23日(金・祝)午前10時~午後3時
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