山田錦を作り続ける ~シリーズ「多可町の山田錦」

福本さん(多可町中区/山田錦の語り部)

牛を助ける稲株起こし

私は昭和25年生まれ。小学校の頃から農繁短縮で稲刈りを手伝っていました。

あ、農繁短縮なんて言ってもわかりませんね?(笑)

稲刈りなど、農業が忙しくなると、家業を手伝うために学校が短縮授業になったんですよ。クラスの70%ぐらいは農家の子だったしね、そういう制度がありました。

大変な作業といえば、稲株起こし。刈り終えた稲、その根っこを一つひとつ、鍬で株を起こすんです。あとで田んぼの土を慣らす、飼牛を助けるためにね。子どもが助けていたのは、親だけじゃなかったんですね(笑)

当時は米と麦の二毛作。いまは山田錦を中心に、うるち米も栽培しています。

60年を超える村米制度 ~坂本集落と福光屋

私の田んぼがある坂本集落は、山田錦の新たな栽培法を研究したり、有機JASを取得してオーガニックの山田錦を作りはじめたり、長年、挑戦を続けてきました。

地域イベントも大事にしていて、たとえば毎年6月、田植えイベントを開催しています。

坂本集落で開催された田植えイベントの様子

▼ハタチの若者も泥まみれ!『山田錦発祥のまち』多可町の坂本集落で、老若男女が田植え

この田んぼは、石川県の酒蔵・福光屋さん(株式会社福光屋/金沢市)と村米制度※で提携しています。
※村米制度:播磨地方の酒米産地と特定の蔵元との間で結ばれる酒米取引制度のこと。契約栽培の一種。

福光屋さんとお付き合いが始まったのは、1960年(昭和35年)です。先代の社長が長期熟成酒を作ろうとして、多可町の山田錦が選ばれました。「坂本集落の山田錦が、酒造りに適した酒米だった」と言ってくださったことが始まりで、ありがたいですね。

2023年10月、福光屋一行が坂本集落の田んぼを訪問した

ところで、酒米って何品種くらいあると思います?

100種類以上です。なかでも多可町発祥の山田錦が「王様」と言われるのは、粒が大きかったり、たんぱく質が少なかったりと、酒造りにぴったりだから。水と空気がきれいな多可町で、私の田んぼがある坂本集落は日照時間も長い。

福光屋さんから「坂本の山田錦は精米しやすいし、驚くのは、どんな気象の年であっても品質の振れ幅が少ない」とご評価いただき、60年を超えるお付き合いになってます。

集落の有機JASの田んぼで栽培した山田錦を「瑞秀」(みずほ)という最高峰の純米大吟醸に使ってくれたり※、原材料に「多可町中区坂本産山田錦」と表示してくれたり ―― 私たち、坂本集落の農家にやり甲斐を与えくださるのが福光屋さん。

長く信頼関係が築けるように、山田錦を栽培したいと思っています。

▼福光屋が坂本集落を訪問

山田錦発祥のまち・多可町を酒蔵が訪問~2023年の検見風景

多可町産山田錦の「これから」

軒先に下がる杉玉は福本さんの手作り

これからも山田錦を作り続けていくためには、新たな取り組みも必要だと思っています。

個人的にはペーパーマルチ農法に取り組みたい。

やっぱり、米作りは草取りが重たい作業なんです。ペーパーマルチ農法は、田んぼに紙を敷き詰めて、土に陽が当たらなくなるので、雑草が発芽しない。きっと、高齢化する農家の助けになるでしょう。

時間が経てば土に還るから、持続可能性もありますしね。

山田錦は酒米ですが、酒づくり以外のニーズが増えているんです。

お菓子にするとか、米粉として販売するとか。「パンを作りたいから、そのための山田錦を作ってほしい」という方もおられます。米粉は利用率も高いし、さらに有機農法で栽培すると、ぐんと価値が高まります。

こうした商品を増やし、販路につなげていくことも、山田錦を作り続けるための方法ですね。

多可町日本酒フェスタ2023

と き 令和6年2月23日(金・祝)午前10時~午後3時
ところ 多可町文化会館(ベルディーホール)
    屋内(大ホール・ロビー)、屋外(噴水広場等)

多可町ゆかりの酒蔵16蔵のお酒を飲み比べできます!
お酒を飲まない方も楽しめる企画あります♪

★お楽しみ抽選会 
 ご来場者全員参加できる
 (アンケートに答えるだけ!)
 アラジンのトースターなど豪華賞品当たります♪

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