映えしかない360gの「播州百日どり」! 道の駅の新名物「車留満定食 肉倍」(2,000円)を味わい尽くす

竜が食べ損ねた鶏

ハイシーズンともなると、1日に80食以上を売る「車留満定食」(しゃるまんていしょく)。

兵庫県多可町の道の駅「杉原紙の里・多可」の看板メニューは、多可町自慢の銘柄鶏・播州百日どり※を180gも使った定食です。

そんなガツン系の定食に増量メニューが登場したこと、ご存知ですか?

その名も「車留満定食 肉倍(ダブル)」!

なんと360gの播州百日どりを……ド、ど、どーン!といただける、食いしん坊バンザイな新メニューです。

しかも、メインが2倍になったのに、価格は2倍じゃない……っ!

開発秘話やキャンペーンの反応を調査すべく、「道の駅 杉原紙の里・多可」の駅長・吉岡潤さんを突撃しますー

※播州百日どり:鶏舎に平飼いされること、100日間(一般的なブロイラー鶏は約50日で出荷)。名峰・千ヶ峰の水と加美区の澄んだ空気、自然に近い飼育環境が鶏を健康的に育て、さらに100日飼育することで、肉のうま味の素・イノシン酸がじっくりとピークに向かい、かつ体の隅々に行き届く。もも肉、むね肉、手羽元、ホルモンなど、あらゆる部位が高品質で、噛み応えとジューシーな味わいが特長。

▼車留満定食 肉倍(ダブル)の詳細

メニュー:車留満定食「肉倍」(ダブル)
価格:2,000円(税込)(※車留満定食・レギュラーサイズは1,500円)
店舗:レストラン車留満(道の駅「杉原紙の里・多可」内)
※道の駅の詳細はページ最下部に掲載

目次

・誕生秘話 ~逆走コースターから生まれた新メニュー
・大人ひとりにつき、子どもひとりの食事代がタダ?! 営業的な効果も「大」だった無料キャンペーン
・作ってるところ見せて! 播州百日どりがパリっパリじゅわ~に焼き上がる
・播州百日どりカツサンドに映えイチゴパフェ? 続々登場する新メニュー
・取材後記 ~竜が食べ損ねた鶏

誕生秘話 ~逆走コースターから生まれた新メニュー

播州百日どりののぼりを掲げる「道の駅杉原紙の里・多可」の駅長、吉岡潤さん

―― 吉岡駅長、さっそく聞かせてもらいます! 「肉倍」ってインパクトが凄いですが、どこから発想されたんですか?

吉岡駅長 ―― なんとなく思いつきました! いや、ほんとのところは去年の秋頃、ある人のYOUTUBEを見てて、アイデアが浮かびました。

―― 動画ですか?

吉岡駅長 ――はい、マーケターの森岡毅さんの。USJってあるじゃないですか、ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)。いまでこそ人気ですけど、2009年ごろ ―― 森岡さんが再建を任された当時は、経営がギリギリだったみたいで。そこで森岡さんが考えたのが「お金を使わずに収益を上げる方法」。
実際、何をすることにしかっていうと、ジェットコースターをね、逆向きに走らせたんです。

―― 逆走? それは思いつかない……!

吉岡駅長 ――ですよね(笑)最初、経営の人たちとか、みんな反対したって言います。でも、それを押し切った森岡さんが、3本に1本、ジェットコースターを逆向きで走らせた。これが評判になったみたいで。

―― 3本に1本って絶妙ですね。逆向きに乗りたくて、いざ自分の順番のジェットコースターが前向きだったら……

吉岡駅長 ―― もっかい並びますもんね(笑)滞在時間は長くなるし、お金はかからないし、話題にはなるし、うまいなーと。

道の駅でも、なにかできないかな……お金をかけずに話題を作るとしたら……看板メニューの車留満定食、あの播州百日どりの量を倍にするってどうかな?って連想しました。

大人ひとりにつき、子どもひとりの食事代がタダ?! 営業的な効果も「大」だった無料キャンペーン

―― そういえば、道の駅で面白いキャンペーン、されてましたよね? たしか、子どもだけ……

吉岡駅長 ―― 1月(2023年)のキャンペーンですね。大人ひとりにつき、子どもひとりの食事代を無料にさせてもらいました。

―― 反応はどうでしたか?

吉岡駅長 ――めちゃめちゃよかったです! 初めは、キャンペーンを知らないお客さまがほとんどで、こちらから「大人の数だけ、お子さんの食事が無料です」と、ご案内してました。

そのうち、キャンペーンをきっかけに道の駅に来られたことがなかった地元の方がお見えになったり、丹波市や西脇市など、すこし遠いところからのご来店も多くなったり。

2度目のピークはリピーター、それと口コミで来てくださった方々が中心でした。

―― 「車留満定食 肉倍」の注文はいかがでしたか?

吉岡駅長 ――ありましたよ! ご家族やグループのお客さまには「こんなメニューが出来きました。シェアしていただくのもおすすめです」と、ご案内して。

なので、お一人で召し上がられるお客さまだけではなく、ご家族で分けられたり、お子さんに食べさせていたり、いろんな形が見られました。

―― 忙しい日で、何人くらいのお子さんが食事されましたか?

吉岡駅長 ――最大で1日、37人のお子さんにお食事いただきました! 子どもがいっぱい集まって、ご家族も笑顔で食事をしてくれるし、お店全体が賑わうと、スタッフも楽しくなるんですよね。

親御さんにもご好評をいただいて、長文のアンケートに「ありがとう。すごく美味しくて、子どもたちも喜んでいました」って、キレイな字で……びっしり! 感謝の言葉が……こんなこと、普段はないんです。感激したなあ……。

また、営業的にも成果が出たんです。すべてがキャンペーンの効果とは言い切れませんが、月間売上でいうと前年比の135%アップでした。2月(取材時)も今のところ127%アップなので、キャンペーンで来てくださった方がリピートしてくださったり、口コミやSNS経由で足を運んでくださったりする方が途絶えていないのかな、と。

作ってるところ見せて! 播州百日どりがパリっパリじゅわ~に焼き上がる

―― 車留満定食 肉倍、そのコンセプトを教えてください。

吉岡駅長 ――播州百日どりのぷりぷり、ジューシーな肉質、多可町自慢の味を楽しんでほしい! これに尽きます。

ぼくね、多可町に移住して、ほんまに感動したんです。播州百日どり。めっちゃ旨い!

鶏を平飼いで育てるって、難しいっていうじゃないですか。それを、しかも100日間。長く育てるリスクもありますよね、病気とか怪我とか。でも、あえてその飼育法で育てて、多可町のキレイな水と空気をたくさん吸収して……肉のうま味がぎっしりつまって。

多可町に遊びに来て、そんな播州百日どりを美味しくいただける、車留満定食を食べないのはもったいない! 
せめて1口でもいいから食べてほしい! 

そういう面からも、シェアできる量として、レギュラーサイズの2倍で新メニューにしました。

吉岡駅長が取材を受けたTV番組

―― 今日は特別に、厨房にお邪魔させてもらえるということで、ありがとうございます。

吉岡駅長 ―― どうぞどうぞ(笑)調理はベテランスタッフさんがしてくれてます。

吉岡駅長 ―― 道の駅のオープン当初(※前身の道の駅「R427」。1995年にオープンした)、車留満定食はフライパンだけでグリルしていたそうです。

いまは業務用のオーブンを使い、加熱は約8分間。ここでじっくり火を入れることで、もっちりジューシーな肉質を損なうことなく、焼き上げることができるんです。

オーブンから取り出された播州百日どりを中華鍋でグリル ――
最高の焦げ目がお目見え!
計360gの播州百日どり、香ばしジュワーぷりぷり肉を召し上がれ!

播州百日どりカツサンドに映えイチゴパフェ? 続々登場する新メニュー

―― 道の駅のメニュー、まだまだ新しくなるそうですね。オススメもあわせ、ご紹介いただけますか?

吉岡駅長 ―― 3月中に、播州百日どりのカツサンドを販売予定です(物産コーナー)。写真とかはまだないんですけど、まい泉のカツサンド、播州百日どりバージョン的な感じで、さっと買え、ぱっと食べられて、しかも美味しい!を目指してます。

もう一つ、イチゴが美味しい3月に、デコって映える「いちごパフェ」も準備してます。こちらは、10種類ぐらいのトッピングと、仕上げのイチゴを自由にデコレーションして、自分だけのパフェを作ってもらう体験型スイーツです。

あと、いまなら鍋焼きうどんにエビの天ぷらが入ってます!

―― レストラン車留満の鶏メニュー、ほかにもいろいろありますが、すべて播州百日どりなんですよね?

吉岡駅長 ―― もちろんです! 「からあげ定食」や「やきとり丼」も人気があります。特にやきとり丼は、タレからオジリナルで作ってるので、この道の駅でしか食べられない味なんですよ。

―― 道の駅や食堂の情報、どこで詳しく見られますか?

吉岡駅長 ―― 速報は道の駅杉原紙の里・多可の公式Instagramで発信してます!

Instagram ID:sugiharagaminosato

吉岡駅長 ―― それと、2023年4月23日に、道の駅で「スプリングフェスタ」を開催します! ふだんとは違う買い物やフードを楽しめるイベントを企画しているので、こちらもInstagramをチェックしてもらえると嬉しいです。

取材後記 ~竜が食べ損ねた鶏

高級食材だった鶏肉

鶏は食肉として比較的安価で、栄養価が豊富。
なにより、調理のレパートリーが豊かで、食卓に欠かせない食材です。

家畜としての歴史は古く、一節には5000年前(紀元前3000年)、インドに起源があるとされます。
日本への伝来は、それから2700年後の弥生時代。
「鶏」の字が聖性や鳳凰(神)、時を司るイメージを象ったことからもわかるように(※)、祭事や祈り、人の世とあの世をつなぐ役割を担っていました。
※「字統」白川静 412p

古墳時代になると、渡来人の影響もあって卵を採ったり、食肉として用いるようになったといわれる「鶏」。

ズず~いと時代を進み、歴史小説がお好きな方は、「軍鶏」という言葉でピンと来るでしょうか?
『忠臣蔵』や『鬼平犯科帳』(池波正太郎)、などに「軍鶏」にまつわるエピソードが描かれます。

ただ、江戸時代の鶏といえば高級食材。
いまでこそリーズナブルですが江戸から明治、大正 ―― なんと昭和の初期まで、高値の花(肉)といえば鶏だったそうです。
それこそ昭和の初期では、3等の老廃鶏と牛ロース肉が同等の価格で、「旦那は鶏、番頭は牛」なんて言い回しも残っています。

そんな高級食材だからこそ、おせち料理やお雑煮など、正月料理の主要食材になったし、客や旅人をもてなし、宴席で振る舞われたのでしょう。郷土料理の鶏、その役割、その歴史も新しく見えてきます。

鶏との結びつきが濃い多可町加美区(旧・加美町)

さて、「播州百日どり」です。
この銘柄鶏を生み出した兵庫県多可町加美区(旧加美町)は、ふるくから「混ぜご飯」の文化があり、集まりや振る舞いには、必ず炊かれていたのだとか。
なかでも「鶏」をつかった「鶏めし」は各地域、各家が伝承しています。
かつては「パートに出るより卵を拾え」といわれ、副業の鶏卵が盛んだった加美区。
お祝いやお土産の品に卵を贈る風習もあり、「鶏」との結びつきが濃い地域です。

「道の駅 杉原紙の里・多可」もまさに、この加美区にある施設。
肉倍で再注目される「車留満定食」は、加美区の伝統と「鶏」へのリスペクトを現代に受け継ぐ、新しい郷土料理なのかもしれません。

軍鶏の行方

そうそう、鶏にまつわる興味深い話を、ひとつ見つけました。

舞台は風雲急を告げる江戸時代、末期。
かの坂本竜馬が、付き人に言ったそうです。
「腹が減った。軍鶏を買ってこい」
使いに出した後、竜馬は襲われ、命を落とします。

近江屋に届けられた鶏は、竜が食べ損ね、誰の口に入ったのか ――

コケコッコー!

ああ、今朝も夜明けの鶏が、よく鳴きます。

(2023年3月3日)

道の駅 杉原紙の里・多可のインフォメーション

画像はGoogleMapを転載

道の駅 杉原紙の里・多可
HP:http://www.sugiharagaminosato.net/

■住所: 〒679-1322 兵庫県多可郡多可町加美区鳥羽733-1
■TEL: 0795-36-1919
■FAX: 0795-36-1920
■交通・アクセス: 車・・・中国自動車道、滝野・社インターから国道175号経由、国道427号で50分。
         北近畿豊岡自動車道青垣インターから国道427号で20分。
■物産館営業時間:午前9時~午後5時00分(定休日:毎水曜日 祝日の場合は翌日)
         午前8時~午後5時00分(日曜日のみ)
■レストラン営業時間: 午前9時~午後4時00分(定休日:毎水曜日 祝日の場合は翌日)
           午前8時~午後4時00分(日曜日のみ)

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