プロ有機農家、直伝! 多可町の農業ツアー第2弾

多可町は京都、大阪、神戸まで、車でそれぞれ1時間半。気候は温暖で、豊かな自然に囲まれています。

播州百日どりやお米、有機野菜など自然豊かな土壌で育った付加価値の高い素材が多数あり、「農」のポテンシャルを秘めた地域です。

そんな多可町で開催された「半日お試し農業体験ツアー」!

農家と話しながら「多可町のこと」「農業のこと」を学べたり、多可町における就農の難しさ、やりがいなどが聞けたりする、この企画。

さらに主催・多可町地域商社RAKUが野菜の販路や売り上げ状況、多可町の移住情報もお伝えする盛りだくさんでお迎えしました。

参加者

Aさん

普段は高齢者にヘルスケアや健康指導を行っているAさん。

西宮市の自宅から1時間のところに畑を借り、有機的な農法で複数の野菜を栽培中です。

ご本人は「趣味程度の営みです」と話します。

「ここしばらく、多可町につながる人との出会いが続いていたこと、しかも、その人たちが口々に『多可町はいい! 多可町は違う!』と言うので気になって。自分で野菜を育てはじめたら、除草剤のことなどが気になりだしたり、ゆくゆくは農業を本格化させたい気持ちもあったりと、SMAUTでイベントを探していました。多可町の農ツアーを選んだのは、日本酒が好きで、お米作りもしてみたいので『ぴったりでは?』と思ったからです(笑)」

Bさん

神戸の大学に通う学生のBさん。

コロナ禍はリモート中心生活で、人と会ったり、お店に出かけたりすることも少なかったそうです。
大学3年生になり、コロナも収まってきたことでボランティアやイベントに参加。経済学を学ぶ傍ら、農業への関心が大きくなり、北海道や石川、和歌山など各地の農ツアー・インターンに出かけています。

「私は西脇市出身で、多可町といえば余暇村公園や町営プール。子どものころから遊びに来ていました。ただ、学生になってからは機会が無く、一度都会に出て、地元や近隣の自然環境を見直したタイミングだったこともあり、今回の農ツアーに応募したんです。集合場所のkaji家のこと、チラシで知って気になってもいました」

ツアースタート

七代目藤岡農場 藤岡啓志郎さん

東京ドーム約1個分のにんにく圃場やその他にもこだわりのお野菜を栽培している有機JAS認定農家・藤岡啓志郎さん。

不耕作地を解消し、有機JAS圃場の拡大を行っており、土づくりは主に緑肥作物で行っています。

モットーは「人の体に安全、安心なだけではなく、環境にも優しい環境・農法の推進」。

藤岡さん自身はカリフォルニア大学で農業経営を学んだ経験があります。

そんな藤岡啓志郞さんの講座「農家の取り組みinTAKA 」からツアーがスタート!

医科学から農業にジャンルを変えるなど、ダイナミックに転身した藤岡さんの経歴を皮切りに、有機農法を中心に据えた営農理念、拠点とする多可町・坂本集落の環境、多可町を取り巻く農業の状況が語られました。

「稲作で生計を立てようとしたら、東京ドーム2個分の田んぼが要ると言われます。耕作面積より大事なのは、苗と種。有機農業は農薬でコントロールできないので、よい苗、よい種を選べるかどうかにかかっているんです」

さらに藤岡さんは栽培するお米や酒米、にんにくの栽培についても、肥料の原料や追肥のタイミング、田畑の手入れの手法を惜しげも無く伝授されます。

あっという間の一時間に、参加者のBさんは「農業を学び始めたばかりで、ご説明のすべてを理解できたわけじゃないけれど、こうしてプロから営農や栽培を聞けて、すごく楽しい」と明るい表情 ―― 

講座の終わりには「米粉のパウンドケーキは最高!」と意見が一致するなど、盛り上がりました。

チヨちゃんの野菜(岡野圭佑さん・岡野美代子さん)

続いて一行は「チヨちゃんの野菜」を訪問しました。

「チヨちゃんの野菜」は多可町で20年以上有機野菜を作り続ける有機JAS認定農家です。

自家採種を行い、約60種類の伝統野菜とイタリア野菜を栽培しています。

白菜部門で2022年「オーガニックエコフェスタ」金賞を受賞。通常の有機栽培白菜と比べ、約6倍の抗酸化作用があり、圧倒的な数値で日本一に輝きました。

高付加価値のついた農産品づくりのスペシャリスト、それが「チヨちゃんの野菜」です。

知る人ぞ知る農家さんを前に緊張感も漂いましたが、ご夫婦の気さくなお人柄に接し、「植物は素直だから、素直に育ってもらえたらいい」「妻は野菜を子どもだと思ってる。朝はおはようって声をかけてるし(笑)」などなど、自然体のお話にも癒やされ、畑のまんなかに置かれたテーブルに、緩やかな風が吹き込みます。

参加者のAさんは、そんな岡野ご夫妻の佇まいに、世界観が揺さぶられたご様子 ―― 

「有機農法で暮らしを立てて、しかも全国的な実績を出すとしたら、どれだけ頑張らなきゃならないんだろうと思っていたんですが……」と驚きの声を漏らしました。

「もちろん、がっつりやらなきゃならないときはあるんですよ(笑)」と圭佑さん。

「まして今年の夏は異常なほど暑かったし、野菜にもダメージが出たしね。私ら、神戸から、この農地に通ってることもあって、どうしても暑い時間帯に作業しなきゃならなくて、大変だったり(笑)でもね、できます」

美代子さんも「野菜に手間をかけすぎないのがいいんです」と相づち。「自分が好きな野菜を育てて、自分がしたい農業をしてね」。

畑をご案内いただきながら、チヨちゃんの野菜ならではの肥料づくり、野菜作りを教わりました。

MKファーム 中尾和義さん

ツアーのラストに訪ねたのは有機JAS認定農家・MKファーム。
経営者の中尾和義さんは約8年前、多可町に移り住んだ移住者です。

中尾さんは多可町オーガニックエコ農業をすすめる会を立上げ、事務局長に就任。農業に関する人材育成を積極に行うなど、若手農家の育成に邁進されています。

「ずっと大阪で会社をやっていてね、忙しくしてました。農業はもとより、土なんて触ったことがなかった(笑)」と中尾さん。

「多可町は人が優しい。水がいい」とも。

中尾さんの農地には炭や酢、灰など、あちこちにオーガニックなエネルギーが蓄えられています。どれも、野良仕事から出る材料を仕込んだもの。「土作りは大切ですよ。うちの畑は、色んな肥料をこしらえています。これなんて、10年近く発酵が続いてるんですよ」

何一つ無駄にせず、活用する中尾さんの農法に触れ、Aさんは「まさに循環型ですよね。これからの時代、とっても大事になること、ずっと前から実践されていたなんて……」と感激していました。

「そうそう、採ったら還さないとね」と中尾さん。

「日本は、野菜の種の90%を輸入に頼っている。戦争があって、食料が少なくなって、入らなくなって、もしも種が止められたらどうなります?」

「自家採種の種はね、最初は育ちにくかったり、育たなかったりするんだけど、続けていると、だんだん土地になじむんですよ。面白いよね」

ツアー後記

今回の「多可町農ツアー」、講師の全員が有機農法を実践しながら、そのスタイルは三者三様でした。

「でも、どこか通じるところがありますよね」とAさん。「田畑の場所や栽培品目は違えど、皆さん同じ方向を見ているというか、目指しているというか」。

Aさんは、農家さんの自然体にも感じることがあったのだとか。

「生活を成り立たせるほど、農業に打ち込む方々は、私からすると雲の上の人たちというか……構えていたところもありました。それが、知識もなにもない私を温かく受け入れ、栽培やキャリアを詳しく教えてくださって……農業体験やインターン、農を中心とした暮らしについても、ヒントが見つかった気がします」

これを受け、Bさんは「インターネット上の情報とまるで違いますね。直接、お会いできて本当によかった」と話します。

「コロナ禍で約2年、閉じこもるような状況で、それを取り戻したい思いもあって外に出て。残りの大学生活と就職をどうするか、考えながらの農業体験ですが、農家さんにお会いして、土や肥料に触れて、初めて身をもってわかることばかり」と弾みがついたご様子。

「今回のツアーは、ボリュームと時間の長さもちょうどいい感じでした。稲刈りや、そのほかの農作業もやってみたいです!」

農家の皆さん、ありがとうございました。

▼運営主体

㈱多可町地域商社RAKU

多可町の有機栽培野菜については買取販売を実施。兵庫県内でのマルシェ活動や販路拡大を通して農産品のPRを行っています。
空き家を通した移住定住支援や空き家の利活用なども行っています。
まずは知ってみる!やってみる!という方、下記、イベントページからお気軽にお問合せください。

SMAUT 多可町イベントページ

▼ツアー内容

所要時間:13時~16時30分

費用:1000円(飲料代金+野菜1品付)

集合場所:Kaji家 兵庫県多可郡多可町中区鍛冶屋477番地

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