多可町で夢見る暮らし ~大切な人たちと共に01 語り手:清水亜沙美(きはら呉服店)

兵庫県多可町生まれ、多可町育ちの清水亜沙美さん。就職を機に町を離れたもののUターンされ、30代で結婚、出産。現在は生家の呉服店を支えながら、2人のお子さんの子育てに奮闘されています。

今日は、そんな清水さんに多可町のことやUターンした理由、この町ならではの子育、家庭と仕事の両立 ―― さらには旦那さんと一緒に追いかける夢など、深く深く、伺います!

さらに、記事の企画を作り、聞き役を務めたのは、多可町の現役ママによる取材チーム「TAKAFAN」。ヒロインの清水さんをはじめ、会話のテーブルに座る全員が、子育てと仕事を両立しながら暮らしているからこそ、盛り上がったインタビュー、その前半をお届けします。

多可の輪
多可町のママグループが企画・取材するインタビューシリーズ。多可町で活動する人物にお話を伺い、さらに「語り手が、次の方につないでくれる」紹介方式でお届けします!

清水亜沙美さんインタビュー 前半の目次

清水亜沙美さんのお仕事
家業を支えたい ~キャリアウーマンライフからのUターン
夫の実家とお店を行き来 ~二拠点生活のリアル
夫婦で新しい夢を見る

清水亜沙美さんのお仕事 

 ―― いまは、どのようなお仕事をされているか、聞かせてください。

きはら呉服店(多可町加美区)で働いています。

業務内容は呉服の販売やレンタルをはじめ、ギフト、婦人服、学生服の販売もしています。成人式の振袖レンタルの試着も随時受けていて、きものの洗濯やお手入れで困ったことなど、どんなことでもご相談いただけたら嬉しいです。

 ―― 「看板娘」っていう感じもありますよね。

そうですね(笑)

もう娘って言って良いのか分かりませんが(笑)

気持ち的には「店を継ぐ」ぐらいの思いがあるし、この店を守りたい。立場的には父が三代目で兄が四代目、私の結婚のタイミングで兄が帰ってきて、今は私は2人のサポートです。

 ―― 初歩的な質問ですみません。呉服と着物、同じでしょうか?

そうですね、呉服とはきもの(着物。以下、清水さんのコメントは、ひらがなで統一)のことです。

 ―― ありがとうございます。清水さんにとって、呉服の魅力とは何でしょう?

きものって着てるときれいじゃないですか?

洋装の中にきものの方がいると、やっぱり華やかでぱっと目がいきますよね〜。

呉服がずらりと並ぶ、きはら呉服店

日常生活を考えると洋服に比べたら色々手間がかかるし着にくいのは確かやし、私自身イベントとかで年に数回しか着られていないのが現状なんですけど、、、でもね、好きなんですよね。

着る機会や、お召になる方も少なくなっているとしても、なくなりはしない日本の文化やと思うんです。守って、伝えていきたいと思わせてくれるものですね。

家業を支えたい ~キャリアウーマンライフからのUターン

 ―― 清水さんはUターンされたそうですが、それまでは、どんなお仕事に就かれていましたか?

Uターンといっても、実家で暮らしながら外に勤めていました。短大を卒業した頃は、バリバリに働くキャリアウーマンに憧れていたこともあって、学童保育で働いたあと、補正下着を販売する営業職に就いたんです。

仕事が楽しかったし、憧れが叶ったこともあって一生懸命やってたんで、そのころは呉服や家業には関心が湧かなかったんです。

ただ、あんまりにも忙しくて時間がなくなったり、7年やってみたけど、営業で物を売る仕事が自分にとって苦しいことになったり、会社の方針とかとズレてしまったところがあったり。

 ―― 憧れがあった仕事が、苦しくなってしまうって、よっぽどですよね。どんなことがあったんですか?

そうですね……私自身、補正下着で体型が変わって、感謝や嬉しさがありました。同じ悩みを抱えてる方にお伝えして、喜んでいただくことやファンが増えていくことがやりがいだったんです。

でも売上目標の数値があって、それを追いかけているうち、自分じゃなくなって来てる? なんていうか、自分のやりたいこととの違和感があって……。

 ―― 売上を作ったり、もっと大きくさせていくという、どちらかというと男性的な志向より、続けていくとか、つなげていくみたいな、いわゆる女性っぽい感覚みたいなものは、ありませんでしたか?

たしかにそうかもしれません。営業職としてやっていくには、お客さまから別のお客様を紹介をしてもらわなきゃならないし、売れなければ「感動させられなかった」と落ち込むこともあって、苦しかったですね。

聞き手:こんどうゆか(TAKAFAN)

 ―― 7年間、お勤めされたことによる疲労感や違和感でふと立ち止まり、ご家業について別の見方ができるようになったのでしょうか? 

それもありますが、「呉服店をなんとかしなきゃアカン」って気持ちが強かったんです。心配になってたので……父がだんだん元気がなくなり、ギフトや企画にしても考えるのが大変そうなのを、間近にしていたこともありました。

長距離通勤や帰りが遅くなる毎日で、ご近所の方も「あの子何しとっての?」って感じやったと思うし……で、ある時「きはら屋のことしたらいいんじゃないか」って自然に思えた時があって。

会社の仕事って私が辞めても困らないというか、きっと誰かが引き継いでなんとか回していく。でも家業については、このままやったら駄目になってまうし「私やから」貢献できることがあるんじゃないかと思いました。

あとは地域で頑張っとっての人が多いことも戻るきっかけでした。

 ―― 多可町でもこのエリア(加美区)は、町外の人を集めるお店が少なくないですよね。

そうですよね。足立醸造さんとかハンズコテラさん、古時計さんとかも、同級生や友人なんですよ。呉服店を手伝うことが、地域貢献にもなったらいいなって思いもありました。

 ―― 地元に戻り、家業を支えると決めてから、着付けや呉服について勉強を始められたんですか?

いえ、前の仕事に行きながらですね。午前中に教室に通ってから出勤するなど、時間をやりくりしていました。

夫の実家とお店を行き来 ~二拠点生活のリアル

 ―― ご結婚出産を経て、子育てしながらお店に立たれているそうですが、今の生活スタイルを教えてください。

夫の実家で二世帯同居させてもらってます。朝、子どもたちと一緒に多可に来て、上の子をこども園に預け、お店に来る流れですね。

 ―― お住まいは多可町ではないんですね。

丹波市の山南町から多可町に通っています。

現住所は多可町っていう。ややこしいですよね(笑)それで土曜日だけ多可町に泊まる生活をしています。

聞き手:たかはままや(TAKAFAN)

 ―― お子さんはおいくつですか?

3歳の男の子と1歳3ヶ月の女の子です(インタビュー時)。最近、下の子が怪獣になりました(笑)

 ―― いやいや期? 

そういう時期ですね(笑)

 ―― 山南町から通われて、しかもお仕事しながら子どもたちを見るの、大変ではありませんか?

けっこう大変です(笑)

下の子はまだイヤイヤ期じゃないと思うんですけど、活発過ぎて手をやいています(笑)お兄ちゃんの影響ですかね……。

子育てについては私の勝手な考えですが、小さな頃から預けるより「うちにいて、一緒に過ごしたほうが子どもにとっていいかな?」と思って。

上の子も最近までは、ずっとここ(きはら呉服店)で一緒にいました。下の子はちょっと早く入園させるかもです(笑)

 ―― いいですね! 家がお店だと、一緒に居たりみんなで見たりしながら、仕事もできますよね。

そうなんです。大変なことも多いけど、いろんな方に可愛がってもらえるのは子供にとってもいいかなって。

拠点はもともと多可町やったんです。でも子どもが生まれたり、家族で話し合ったりしながら行き来する形になりました。

 ―― キャリアウーマンとして長く働かれながら、ご結婚や出産など、別の形の幸せも実現されて、すごいですね。

ぜんぜん、そんなことありません(笑)家業に入ったのが28才くらいで、あっという間に30才を超え、当時から結婚願望があったものの「私はもう無理やな……」と思ってましたよ。

結婚できたのも、35才ぐらいでしたし。タイミングってやってくるんだな〜って思いました。

 ―― ドラマがあったんですね!

たまたま縁に恵まれました(笑)

夫婦で新しい夢を見る

 ―― 旦那さんも新しい事業茶穀米研究所に取り組まれているんですよね。

そうなんです。雑穀米に、お茶っ葉を混ぜた『茶殻米』という商品を販売しています。ご飯と一緒にお茶が食べられる、あたらしい健康食品です。「お茶は食べもの」がキャッチフレーズです。

 ―― お茶って、呉服のイメージにも重なりますね。

そうですよね、和の共通点があって日本の心って感じですよね。

営業していくほど色んな繋がり方が見つかってご縁をいただけたり、いずれは多可町の名産になれば……なんて、ふたりの夢ですね(笑)

 ―― ご夫婦で夢を追えるなんて、素敵ですね! どういった経緯で、出来た商品なんですか?

夫自身、「人生、これ!っていうものを見つけたい」と言ってたんです。うちが呉服店だから、「きものが着られる仕事とかもええよなー」と。

そんな話をしているうち、夫が日本茶アドバイザーの資格を取得して、お茶の勉強をしているうちに思いついた、という流れです。

 ―― まさに、ご夫婦で生み出した製品!

『茶殻米』は、ある日夫が「思い付いた」って、ぱっとひらめいたので、「それめっちゃええやん、やろ!!」って応援しました!

オリジナルの商品が出来て、販売できることは嬉しかったですね。

呉服店って小売業なんです。きものや小物、作られた製品を仕入れて売る商売なので、ほかのお店でも同じものが買えてしまうことがある。きはら呉服店ならではの何かがずっと欲しかったんです。

 ―― 女の人って、自分の成功とか売上をあげていくことに、けっこう抵抗があるんですよね。でも、自分の幸せが誰かを幸せにするし、2人の夢、茶穀米の成功は、地域のためにも絶対になるから、頑張ってほしいです。

聞き手:こんどうゆか、たかはままや(TAKAFAN)
企画・進行・校正:こみなみひろえ(TAKAFAN)

>> 記事後半に続く <

清水亜沙美さんインタビュー 後半の目次
・子育てと家業、大変なこととやりがい
・ちょうどいい距離感 ~子育てしやすい多可町
・多彩な活動と、それを支えるモチベーション
・夫婦の会話に弾む夢 ~きはら呉服店のこれから

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