山田錦を世界に、多可町に ~シリーズ「多可町の山田錦」

宮内さん(多可町八千代区)

半世紀に及ぶ米作り

農業に携わったのは、それこそ子どもの頃からですね。稲刈りや苗作り ―― すべて手作業の時代。田植えは出稼ぎの方に来てもらいました。泊まってもらってね、大事業でしたよ。

米作りを父から引き継いで、今年で約50年。昨年まで、八千代の山田錦部会で役員を16年間務めました。いまは1町ほどの田んぼで山田錦を生産しています。

山田錦を育てる難しさ

八千代区下野間の土地は砂地系が多く、私の田んぼも水はけはいいですね。ただ、水入れの数や時期には気を使います。

水の管理、難しいですよ。除草前は田んぼに水が張ってないといけないし、たくさん雨が降れば除草剤が流れてしまう。均等に水を張ることも大事ですね。田んぼの底は高低差があるので、行き渡っているかを見ます。

鹿の被害もあります。特に、八千代区は鹿の数が多いと言われていて、まぁ……この通り、私の田んぼは柵もしてませんし、食べ放題ですね(笑)畦から首を伸ばすだけじゃなく、田んぼの中まで入ってきますよ。

田植え直後の稲なら、食べられてもまた成長するんです。でも2回、3回と食べられると、成長が遅れます。また、収穫期にも食害を受けるので、大幅に減収となってしまいます。獣害の大きな問題ですね。

今年は、水を溜めなければならない時期、鹿に水を止める板を壊されてしまった。気づいたら水が抜けていてね。米作りをしていると、こういうトラブルが毎年……なにかしら起こりますよ。

酒米作りでもっとも印象的な出来事

八千代区は村米制度※で、富山県の酒造・満寿泉(ますいずみ/(株)桝田酒造店)さんと提携しています。

※村米制度:播磨地方の酒米産地と特定の蔵元との間で結ばれる酒米取引制度のこと。契約栽培の一種。

満寿泉さんとお付き合いが始まったのは、私が山田錦部会で役についてすぐなので……16年ぐらいになりますか。農業に携わるようになって以降、もっとも印象的な出来事の一つです。

社長さんが招いてくださって、富山市内や酒造を見学して、夜は皆で集まって、お酒をいただいてね。写真も一緒に撮りました。長年の山田錦作りが一つ、大きな形になったようで嬉しかったですね。

今年も八千代から見学に行かせてもらったり、6月は田植え、10月に検見と、満寿泉の皆さんも来てくださってね。温かいんですよ、社長さんも、社員さんも。ありがたいお付き合いです。

▼桝田酒造店(富山県)の皆さんが八千代区で田植え! 地元の農家と交流会も

山田錦のお酒を世界に、多可町に

満寿泉さんは一部、ふるい目を2.05mm※ではなく、2.1mmに設定され、この大粒の山田錦を、純米大吟醸ともなれば30%まで削るんですよね。私たち農家も「心白が大きく、太い山田錦を生産してください」とお願いされてます。

※2.05mmのふるい目:グレードアップ兵庫県産山田錦の施策。「平成23年産米よりJAグループ兵庫が取扱う全産地において、生産者が調製時に使う動力米選機のふるい目を、従来の2.00mmから2.05mmに変更し、統一しました。これにより山田錦の粒張り・粒ぞろいが良くなり、酒造りに大きなメリットとなります」(引用元:兵庫県産山田錦 生誕80周年記念PDF)。精米品質が向上し、吸水が安定。精麹が安定する。

こうした追求の成果が2年連続、インターナショナルワインチャレンジで金メダルを獲得※されたことにも、つながっているのかなと思います。

これからも品質のいい山田錦を生産して、酒蔵のこだわりや私たち農家の取り組み、山田錦のお酒の美味しさを、もっともっと知ってもらいたいですね。世界にだけじゃなく、多可町の皆さんにもね。

※純米大吟醸「満寿泉」(ますいずみ)は2008年と2009年、世界的に最も権威あるブラインドテイスティング審査会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」のSAKE部門でゴールドメダル。国際的な評価を得た。

多可町日本酒フェスタ2023

と き 令和6年2月23日(金・祝)午前10時~午後3時
ところ 多可町文化会館(ベルディーホール)
    屋内(大ホール・ロビー)、屋外(噴水広場等)

多可町ゆかりの酒蔵16蔵のお酒を飲み比べできます!
お酒を飲まない方も楽しめる企画あります♪

★お楽しみ抽選会 
 ご来場者全員参加できる
 (アンケートに答えるだけ!)
 アラジンのトースターなど豪華賞品当たります♪

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