多可町加美区の銘柄鶏、播州百日どり。その飼育をされるのが株式会社加美鳥(かみちょう)(以下、加美鳥)の代表・石塚竜司さんです。
旧加美町を代表する産業だった養鶏。この土地で産声をあげた「播州百日どり」はブランド鶏として、40年以上の歴史があります。
かつて「パートに出るより、鶏を飼おう」という言葉があったほど、収入になった播州百日どりの飼育は、100軒を超える農家があったそうですが、それも今は昔。
そんな状況に、石塚さんは孤軍奮闘しています。鶏、一羽一羽に目をかけ、気を配り、天災や病気のケアも欠かしません。
ただ、飼育や事業所の運営は苦しみとの闘いや困難と直面するようで ――
加美鳥インタビュー、第2弾は「播州百日どり」について詳しく伺います!
●加美鳥・石塚竜司さんインタビュー2
教えて、石塚さん!
「加美鳥と播州百日どりのこと」
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質問!
Q:いきなりですが、石塚さんは体格がいいですよね。なにかスポーツをされていましたか?
Q:「加美鳥」の由来を教えてください。
Q:加美鳥のコンセプトを教えてください
Q:なぜ加美鳥を始められましたか?
Q:養鶏・卵生産のお仕事で、苦労するのはどんなことですか?
Q:お客さま・お取引先との忘れられない会話はありますか?
Q:加美鳥の展望を教えてください
Q:いきなりですが、石塚さんは体格がいいですよね。スポーツをされていましたか?
A:アメフト仕込みです。
高校時代にアメリカン・フットボールと出会い、ずっとプレーしてました。
ポジションですか? 最前線、ぶつかるところです(笑)
試合中はアドレナリンが出て、相手と衝突したって、ほとんど痛みを感じません。挫いた足首がパンパンに腫れていることに、ハーフタイムに気づくこともあるんです(笑)
先輩はもっとすごくて、試合中に腕を骨折。それでもテーピングでぐるぐる巻きにして競技して、「プロテクターが要らなくていい!」って笑ってました。
激しいですけどね、アメフト。こんなに面白いスポーツ、ないですよ。ルールさえわかったら、本当に楽しい。
夢はいつか、アメリカのスーパーボウル※を観に行くこと。毎年、2月の上旬に試合があって、この日だけは弊社も休みです(笑)
※スーパーボウル:アメリカンフットボールの最高峰・NFLの優勝決定戦。アメリカのテレビ視聴率は毎年、年間で最高を記録する。
いや、違いました。ひよこが届く日は休めないので、こういう年は試合がどうなったか、一日中やきもきするんですけど……(笑)
妻と二人で観に行くとしたら、合計400万円……それ以上かかるかもしれません。スタジアムで観るだけで、100万円くらいするので。
今年は試合前やハーフタイムショーに、日本人のチアリーダーが踊ったんですよ。世界中のチア選手が目指す大舞台。本当にすごいことだと思いながら、テレビを見てました。
Q:「加美鳥」の由来を教えてください。
A:生まれ故郷の旧町名、「かみちょう」の響きが好きなのと、播州百日どりと播州地卵に関わってこられた方の想いも伝えていきたいのでこの屋号に決めました。
はじめは「石塚養鶏」とか、いろいろ考えたんですよ。でも、紆余曲折を経て、加美鳥になりました。
一つは、音の響き。私の故郷であり生産の拠点である加美町が、平成の大合併で多可町加美区になったんです。
「かみく」と「かみちょう」だと、やっぱり違いますよね。
「かみちょう」の響きを残したいな、と。播州百日どりは加美町で生まれ、育った事業ですしね。いまは無くなった町名の響きも残せます。
もう一つは、お世話になっている野乃鳥※さんが3文字のシンプルな表記、響きだったこと。こちらもヒントになりました。
※野乃鳥(ののとり):大阪に拠点を置く「鳥の総合商社」。飲食店やスイーツ店を展開する。
Q:加美鳥のコンセプトを教えてください
A:豊かな自然環境と天然水でのびのび育つ鶏、卵を味わっていただくことです。
多可町は酒米を代表する「山田錦」 発祥の地。豊かな自然が広がります。
加美鳥の鶏舎は、そんな多可町でも、とりわけ自然が豊かな加美区の山の中にあり、ちかくに「松か井の水」が流れています。これは平成の名水百選にも選ばれた天然水です。
こうした場所で育った鶏、そして卵を味わっていただけたらと思っています。
Q:なぜ加美鳥を始められましたか?
A:元々は個人事業主で3年前に法人化しました。播州百日どりの養鶏事業に後継者が不足してると聞き、私が守らなければと思ったんです。
と、言い切るのは……ちょっとかっこよすぎですが(笑)
実はイメージと現実にギャップがありました。31歳で加美鳥を始める前、播州百日どりの事業は、かなり盛り上がっていると思い込んでいたんです。
かつて養鶏事業が盛んだった時代、町中に100軒を超える事業者がいたり、お祭りやイベントで鶏料理のレシピを考えてもらったりと、この地域の中心といえば「鶏」。
「パートに出るなら、鶏を飼う方がいい」って言葉があるくらい、収入になっていたんです。
いまは、「農家をやるからにはもう一度、播州百日どりを盛り上げたい」と思っています。町のシンボルにできればと。
Q:養鶏・卵生産のお仕事で、苦労するのはどんなことですか?
A:夏場の飼育、流感の対策など多岐に渡ります。
特に夏場の飼育は難しい。
・産卵率が低下
・鶏が水を飲むので、白身の水分量が上がる(しゃばしゃば感)
・熱波
熱波被害
近年、困らされるのが熱波です。
弊社のような解放鶏舎、平飼いで飼育していると、熱のダメージを直接受けます。
特に、播州百日どりは、お腹をぺたっと床につける習性です。基本的にはずっと、その姿勢で過ごします。だから、あんまり気温が高いと、地熱にやられてしまって。熱中症の様な感じです。
酷いときは鶏肉を茹でたときのように、むね肉がボイルされるんです。この症状で一昨年、100羽が死にました。
鶏が動きを止めないよう、脅かすための藁を吊り下げたり、ボールを投げ入れたり、息子のラジコンを走らせたりと対策しましたが、効果的な策は見つかっていません。
とくにラジコンは子ども用だったから、遠くまで電波が届かず、使い物になりませんでした(笑)
流感と天災
多可町は自然豊かで、山合い。キツネやタヌキなどの獣害もありますし、鳥インフルエンザも怖い。昨年、姫路で鳥インフルエンザが発生して、そういう時期は不安が消えません。
ここ数年、夏になるとすごい雨が降りますし、台風も怖いですね。
10年前は台風で鶏舎が水浸し。鶏舎がひとつ、丸々水没して、この鶏舎にいた鶏も全滅。廃業も頭をよぎりました。
鶏は生き物ですし、天候や天災もコントロールできない。精神的にきつくて、農場に行くのもつらい時がありますよ。鶏舎で膝を立てて泣いたこともある(笑)
友人や事業者さん、役場の方々に励まされ、なんとか乗り越えられています。
Q:お客さま・お取引先との忘れられない会話はありますか?
A:あるママさんから「子どもがおやつがわりに、播州地卵のゆで卵を食べてます」と言ってもらえたこと。
播州地卵が日常生活に溶け込んでいるように感じ、うれしかったですね。
事業者さんに、励まされる会話もありました。
脱サラして養鶏の世界に飛び込んで3年目ぐらいの頃、事業をやめようと思ったんですよ。
実際に事業を始めたらイメージと違ったところが見つかったり、家族を養っていくのにこのままじゃ不安だなと思ったり……考え込んで。
そんな折り、朝、目が覚めて、ふと「あの人に会いに行こう」と思った方がいるんです。
大阪で鶏を扱う商品の開発や鶏肉を扱う店舗の経営、プロジェクト・イベント企画などを精力的にされている方で。
まぁ、会いに行くといっても噂を聞いたことがあるだけで、名前も住所も知らない(笑)とりあえず出荷先の養鶏センターに電話をかけたら、「いま、コンサルにきてるよ」と。
「え?」って思いますよね、コンサルに来てる……多可町に(笑)
すぐに行って、ご挨拶させてもらって早々、「田舎だからできることがあるはずだ」と言われて。
翌日、その方のお店に行って、大阪の池田です。鶏料理のこと、経営のこと、たくさん勉強させてもらいました。
このときお会いしたのが、野乃鳥の代表・野網厚詞さん。
今でもお世話になっています。
Q:加美鳥の展望を教えてください
A:播州百日どりと播州地卵の両方を扱える強みを活かした事業や野菜やお米の栽培、障がい者の方に働く機会を提供したいなど、やっていきたいことが沢山あります。
養鶏と卵生産、両方を事業として行う農家は少ないので、この2つをつなげ、掛け合わせるようなことを考えています。目指すのは「集客もできる農場」です。
野乃鳥さんが運営する「鳥、マルシェ。」に出品したり、多可町で鶏料理や卵のスイーツ、お土産用の卵が買えたりするようなスペースの開設も企画しています。
卵かけごはんやスイーツ、新しい鶏料理のコンテスト ―― 地元のグループに協力してもらえたら、さらに出来ることが増えるはず。子どもたちの食育もすすめたいですね。
鶏ふんがたくさん出るので、これを肥料にアスパラガスを育てるのもいいかなと思ってます。循環型の農業につながるじゃないですか。
重度障がい者に働く機会も提供したい。いまも商品にシールを貼ってもらうなど、お手伝いしてもらっています。事業を続け、広げるなかで、こうした機会を増やし、人手を欲している事業者さんにつなぐ所まで持っていきたいですね。
基本情報
株式会社加美鳥
〒679-1211
兵庫県多可町加美区寺内87-2
TEL:0795-35-1510
FAX:0795-35-0565
HP:https://kamichou.myshopify.com/
Instagram:kamichou0305
取材:小迫悠香/黒川直樹
撮影・ライティング:黒川直樹
加美鳥の前の記事を読む! → 加美生まれ、加美育ち。播州地卵を次世代に! 0から教わる生産のイロハ
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