植物は裏切らない?! 激変した人生観と田畑に描く大きな夢 七代目藤岡農場 P.2

●AgLiBright(七代目藤岡農場)インタビュー
なぜ藤岡啓志郎さんは、生命医化学から農業の道に? 

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トピック
・やっぱり食だった! 未知の可能性に飛び込んだ

・がらりと変わった人生観 ~恩師との出会い

・君と一緒に夢が見たい ~AgLiBrightを支える人たち

・植物は裏切らない! 農業に託す大きな夢

やっぱり食だった! 未知の可能性に飛び込んだ

七代目藤岡農場の代表、藤岡啓志郎さんは農家の長男です。

「小さなころから豆の選別や草取り、収穫は暮らしの一部。好きとか嫌いとかじゃなかったですね、農業は」と振り返ります。

ただ、大学院まで進学し、学んだことは農業ではなく、生命医化化学だったとか。

「ゆくゆくは企業に入って、医薬品や化粧品を作るつもりでした。転機だったのは、活性酸素や予防医学の勉強をやったこと。その時、『人にとって大事なのは、やっぱり食なんだ』と気付いて」

やっぱり食とは?藤岡さんに詳しく尋ねました。

「三大欲求の一つでもあり、人は何か食べないと生きていけないので。毎日食事をしますよね。

それなら、日々のルーティンで病気を未然に防ぐことができることが一番合理的であると考えました。

それが美味しい食べ物であればなおさら良いですし、作物を作れば農地保全もでき、伝統を守りつつ新たな特産を生み出していくことも可能です。

農業という職業は発展途上だからこそ、未知の可能性が広がっていると当時から思っていました」

食の大切さに気付き、藤岡さんは大学院を中退。

行き先を国内の農業施設に定めたそうです。

「そこは農業研修を受け入れてくださる施設でした。トマト作りを通じて、農業の基礎的なことを体験し、アメリカのカリフォルニアに行きました」

「種苗会社(SakataSeedAmerica)の圃場写真は品種改良を行っており、写真を載せることができなくて」と藤岡さん。
この写真は、その替わりに使わせてくれたカリフォルニア州・サリナス地区のブロッコリー畑。

「そこは作物の品種改良を行う企業でした。作ったのはブロッコリーや人参。その後、カリフォルニア大学で農業経営を短期で学ばせて頂き、アメリカ滞在は通算19ヶ月。帰国して、多可町で起業しました」

がらりと変わった人生観 ~恩師との出会い

藤岡さんはアメリカ時代を「人生観が変わった時期」と振り返ります。

「出会いがありました。カリフォルニアで上司として、指導してくれた方と知り合えたことが大きかったんです。

いまでこそ、AgLiBrightの企業理念に『最高の農産物から笑顔を生み、笑顔から幸せを創造し、皆様の未来づくりに貢献する』と書くぐらい、人づくりや地域貢献、環境のことを重んじていますが、むかしは全然違ったんです。

それこそ、大学院で生命医化学を学んでいた頃なんて、『企業で化粧品を作って経験を積み、人脈を広げ、それを元手に起業して……ひたすら稼ぐ!』という気持ちだけ(笑)

当時の僕にとって、経営の仕組みやビジネスプランは、お金儲けの道具でした」

こうした考えを揺さぶり、人生観そのものを新しくさせた上司と藤岡さんの間には、農業に限らず、様々なコミュニケーションがあったそうです。

「たくさん話しました。農法や作物のケアなど、農業の基礎を叩き込まれ、働き方や生き方の話が聞けることもあって。

一日の終わり、それを一つひとつ、書き出したんです。僕が考えたこと、感じたことも書き加えて、A4のページを文字で埋めて、びっしり(笑)これを翌日、上司に読んでもらうんです。しかも添削してくれて」

人生観を変えたコミュニケーション

藤岡さんがカリフォルニアの企業に勤めた時期、上司とやりとりしたノート

「上司は当時、SakataSeedAmericaのSalinas研究農場へ派遣された駐在員であり、ブロッコリーの育種をされるブリーダーの方でした。社内起業家であり、考え方が素晴らしくとても尊敬できる方でした。

こういう人が、僕のノートに向き合って、『こういう考え方もある』とか、『それは違うんじゃないか?』とか、本気で教えてくださった。

「『思考』と少しのお金があれば、必ず人生をhappyなものに出来るよ! とにかく『思考』!が大切だ」と別れ際に仰ってくださったことを今でも覚えています。

やはり大事なものはお金でも地位でもなく「人」だと改めて思った瞬間でした。

こうしたやりとりが僕の思い込みを払拭してくれました。

農業は利益をあげるためだけにするのではない。人づくり、環境づくりだったり、協力者・地元の方への感謝を伝える行いだったりこそ大事なんだ、と。

上司との出会いがなければ、こうした考え方や、いまの僕は存在しません。AgLiBrightや七代目藤岡農場も、そうですね」

君と一緒に夢が見たい ~AgLiBrightを支える人たち

藤岡さんは帰国早々、起業を本格化。

「企業理念を考えるだけで1年以上悩み(笑)、最終的に、これくらいの分厚さでした、起業のために作成した書類」といいながら、右手でコの字型を作った藤岡さん。

人差し指と親指の距離は、なんと10㎝以上! 

アメリカで薫陶を得、帰国後も考え抜いた成果をまとめるのは、大仕事だったようです。

「立ち上げたAgLiBrightは事業の母体。七代目藤岡農場はこの中にあって、黒にんにくの加工・販売を行っています。」

「現在のスタッフは僕を入れて4名。元々、取引先の肥料会社に勤められていた方が、うちの畑を見て、隙間時間に手伝ってくださったり、従妹が農作業をフルタイムでサポートしてくれたり、60代になって一度リタイアされた方が来てくださったり。

後者の方が再チャレンジを決めた理由は、AgLiBrightが掲げる理念への共感だったそうです。お話したとき、『藤岡君と一緒に夢を見たい』と言ってくれて……嬉しかった。年配の、人生の先輩からそう言ってもらえるなんて。皆に助けられながらやっています」

植物は裏切らない! 農業に託す大きな夢

スタッフだけではなく、「町民の皆さんにも助けられながら、やっています」と藤岡さん。

「多可町って親切な人ばかりなんですよ。JAさんや地元の農家さんはアドバイスや有機農業に欠かせないもみ殻を分けてくださるし、手伝ってくれる方もたくさん。

おなじ農業を生業にする方が、うちの製品の販路拡大のため、ご自身の取引先まで連れてくれたこともありました。『藤岡君の製品はいいから、ぜひ』と。

競合になるかもしれないのに……すごいですよね。有難いって思います。支えられているなって」

取引の途中で音信不通、準備も資金も水の泡に

とはいえ、危機や災難もあるのだとか。

「取引することが決まり、かなりの数の商品を送ったら、お金が振り込まれなかったこともあります。その後、詐欺だったことに気がつきました。ダメージは大きかったですね……(笑)

でも、全て良い勉強だったと思うようにしてるんです 。僕が先に分かっていたら、騙そうとする気持ちを見抜けていたら回避できた。

そもそも人のせいにしたって、何も生まれませんよね。

これから同じ目に遭わないため、どうしたらいいかを考え、そういう機会だったと割り切って、次に活かしています。

まぁ、メンタルが壊れそうになるようなピンチや挫折、たびたびあるので(笑)そういう時の本とかノートを用意してます。セーフティーネットですね。

大きな夢 ~大規模の無農薬栽培でにんにくを栽培。いずれは町の代表的な特産品に

「ピンチは不可避」という藤岡さん。

「そもそも、田植えや草刈り、収穫……夏場なんて一層、体が辛い。大変なことはたくさんあります。でも……」と言葉を区切り、こう話しました。

「今、うちの畑は18ヘクタール。東京ドームにたとえると4個くらいの面積があります。

僕は28歳ですが、40歳までに50ヘクタールほどの圃場で、大規模の無農薬栽培を実現し、にんにくを多可町の代表的な特産品に成長させたいんです。

それと、AgLiBrightの農地を拡大するだけではなくて、多可町で新規就農したい方のお手伝いもできたらと思っています。

全国の田舎、どこでもそうですが、多可町もまた耕作放棄地が多い土地。これを有効活用できれば、町も活性化するし、人も増えるじゃないですか。地域貢献につながりますよね。

よく思うんですよ、植物は裏切らないって。大変なことがある農業ですが、手をかけただけ成果が出る。

なにより、お客さまに直に野菜、製品を届けることができて、「おいしいね」と言ってもらえる。それがやりがいです。

黒にんにくにした時の味が一番良かったんです。

取材:寺川敏博/小迫悠香/黒川直樹 
撮影・ライティング:黒川直樹

基本情報

(株)AgLiBright(七代目藤岡農場)
679-1132
兵庫県多可郡多可町中区坂本46
電話/FAX:0795-32-3123
HP:https://www.blackgarlic-alb.com
MAIL:fujioka_farm@blackgarlic-alb.com

(株)AgLiBright(七代目藤岡農場)
679-1132
兵庫県多可郡多可町中区坂本46
電話/FAX:0795-32-3123
HP:https://www.blackgarlic-alb.com
MAIL:fujioka_farm@blackgarlic-alb.com

七代目藤岡農場の記事一覧

p1.多可町の黒いダイヤ! 開発に4年を費やした黒にんにくを徹底解剖
p2.植物は裏切らない? 激変した人生観と田畑に描く大きな夢

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