10年かけて100カ国を歩いたら、生まれ故郷に辿り着いた ~農場なつめやしp.1

変わり種もいっぱい! 旬の野菜を年間約60種、有機物質だけを使いながら栽培します。

祐尾智紗美さんは約10年間、世界をぐるりと歩いた旅人です。

「海外に行って、お金がなくなれば現地で働いて、それでもやりくりできなくなったら日本に戻ってバイト。貯めたお金でまた海外に行って」

そんな祐尾さんが旅先のいろんな農場で働いた経験や、その農家の家族・仲間と過ごした濃厚な生活から有機野菜づくりに目覚め、生まれ育った多可町で立ち上げたのが「農場なつめやし」です。

今回、より詳しい事情をインタビュー。

醤油かすや鶏ふん、多可町の山々から集められた落ち葉など、有機物質だけを使いながら農業ができる、この町の環境についても教えてもらいます。

有機農業の就農希望者、栽培に興味がある方にもヒントがある記事です!

●農場なつめやしインタビュー

教えて、祐尾さん! 
「農場なつめやしが生まれるまでのこと」

PAGE.1

質問!

Q:本格的に農業を始められた年月と場所を教えてください。

Q:なぜ多可町で「農場なつめやし」を立ち上げようと思われましたか?

Q:事業名「農場なつめやし」は、どのような由来がありますか?

Q:野菜づくりの経歴を教えてください。

Q:本格的に農業を始められた年月と場所を教えてください。

A:2019年に隣町、市川町の有機農家で研修を始めました。

3年間の研修を終え、2022年4月から本格的に就農します。農場なつめやしの本格スタートです。

Q:なぜ多可町で「農場なつめやし」を立ち上げようと思われましたか?

A:暮らしの豊かさが感じられるし、豊かさをみんなと分け合えるからです。


誇りに満ちたファーマー、豊かさの実感

オーストラリアに2年間くらいいたんですけど、そこで初めて、野菜農家で働きました。初めて大きなトラクターを運転したのも、オーストラリアです。

農法は農場によっていろいろ。畑が大きければ、効率や管理の面から農薬を使うところが多いし、有機農家の仕事もやりました。

そんな経験から、有機農法を選んだのは、生活の中で溢れている“豊かさ”を感じたからです。

長く滞在していたオーストラリアやニュージーランドでは、小さな町でもよく週末にファーマーズマーケットが開かれます。

小規模の有機農家がたくさん出店するんですが、農家さんの顔が誇りに満ちていて。手をかけた有機の野菜や果物を並べ、みんなキラキラした目で野菜について話をしてくれるんですね。

有機農家のお手伝いをしているとき、仕事のあとにバーベキューをすることがありました。目の前の畑で採れた新鮮な野菜やお肉を焼いて、一日の仕事を振り返りながら、盛り上がって。

こういうのが人間の本来の生活なのかな、とても豊かだなぁと感じたんですよ。

農薬を効果的に使えば生産性は高まるし、お金にもなります。そういった農法、経営が必要な場所もあると思う。

でも、人の暮らし、地球にとって、どちらがいいのか……? 

豊かな暮らしのお裾分けがしたい

いろんな人と出会い、いろんな経験をしながら 世界を放浪した10年間。「農業をして生きる」という軸が自然とできていました。

少量多品目、小規模でもいい、生産者が見えるという安心感を伝えられる地元で、安心、安全な方法で旬の野菜を育て、地域の人たちに豊かな暮らしのお裾分けができればいい。

そんな農業がしたいな。それが、私の答えでした。

実は、父も農業を営んでいるんです。家の周りには田んぼや畑が広がり、農業のベテランさんたちも住んでいる。

地球を一周して、自分に合う土地を探したら、それが生まれ育った多可町でした。

Q:事業名「農場なつめやし」は、どのような由来がありますか?

A:ヤシ科の木、ナツメヤシから採りました。

簡単に言えば、”私の大好物” です。

そう、大好物を屋号にしました。

放浪していた頃、ほんとによく助けられたんです、ナツメヤシ。

アフリカのサハラ砂漠や中東など、ヤシの木が生えている場所が多いんですが、木立の下にいくと、ナツメヤシの実、デーツがボコボコ落ちてる。よくそれを拾って食べてました。

一番おいしかったのは、モロッコの小さな町、タフロートのナツメヤシの木の下で一日中拾って食べたデーツですね。

Q:帰国してからの野菜づくりについて、教えてください。

A:ちかくの農場に通い、野菜作りを学び始めました。

2018年ですね。週末、市川町(兵庫県)の牛尾農場に通うようになりました。こちらの農場は有機農業で有名です。

▼牛尾農場
公式ホームページ

牛尾農場と橋本先生

この、牛尾農場で教えてもらったことを、復習しながらやっていきたくて、多可町で小さな畑を借り、白菜やカリフラワー、ブロッコリーを作り始めました。

同時に、近隣の有機農家さんを訪ねたり、橋本先生※に堆肥作りを教わったり、育苗施設を回ったり、イベントやセミナーに参加したりと、いろんな機会を作るようになって。

※三重県で手作り肥料を開発し、普及活動も行う有機農家

橋本先生との出会いは大きかったです。

始めに、橋本式の堆肥づくりを二泊三日で受講したんですが、「ここに答えが全部ある!」と衝撃を受けました。私が大事にしたいこと、目指したいことが、そのまま実践されていて。

その後、橋本先生には、1年間の「堆肥の学校」でもお世話になったのですが、受講生も多様でした。志があって、みんなが先生にぶつける質問も面白かった。

巡り合わせや人に恵まれ、学び続け、いまがあるような感じですね。

取材:小迫悠香/黒川直樹 
撮影・ライティング:黒川直樹

「農場なつめやし」の次の記事を読む! → 農場なつめやしの安心安全栽培って、どんな農法?

基本情報

農場なつめやし
オーナー:祐尾智紗美さん
多可町加美区山野部

農場なつめやしの記事一覧

p1.10年かけて100カ国を歩いたら、生まれ故郷に辿り着いた ~農場なつめやし
p2.農場なつめやしの安心安全栽培って、どんな農法?
p3.いずれはオリジナルの伝統野菜が誕生? 自家採種の役割、そして楽しさ
p4.タカラバコ? 野菜作りで人との距離が近くなり、世界が変わった

SHARE