ミニ企画展『山口茂吉の歌』那珂ふれあい館(兵庫県多可町中区)

時代の移ろいとともに変わる「歌」

「歌」(うた)の語源は「成就を求めて祈る声・声調」。

まず「願望」があり、「それを秘めた人」がいて、さらに「願望の声を聞き届ける超越的な存在」とが三位一体となり、形になった行為が「歌」だったと、この一文字から想像されます。

そんな歌 ―― 時代によって呼び名が変わることをご存知でしょうか?

たとえば、兵庫県多可町発祥の和紙・杉原紙が文献に記録された永久4年(1116)※、歌は「大和歌/倭歌」(やまとうた)と言われました。

※時代区分でいえば奈良~平安、中古の時代。794~1191。

漢字文化を作り上げた中国の存在が前提にあり、その中国伝来ではない「大和の、倭の国の/わたしたちの歌」、という文化の芽生えが感じられます。

すこし時代を下って中世(1192~1602、鎌倉~安土桃山)になると、歌は「詩歌」(しいか)と呼ばれます。
中古の時代では「大和/倭」という地名・国名と抱合せだった語が、表現・文化に基づく「詩」との組み合わせに変化。
この時代に至って、「歌」が日本独自の文化まで発展したことが推測されます。

ミニ企画展『山口茂吉の歌』の詳細

多可町の古墳・文化調査、資料収集の拠点「那珂ふれあい館」。
こちらで現在、歌人・山口茂吉の短歌作品が紹介されています。

生活に根差し、かつ写実的な歌を多く残したことから、正岡子規にも重ねられる山口茂吉。
多可町加美区清水出身の歌人です。

展示は4章立て。
山口茂吉の経歴をひもとき、

「故郷・多可町の歌」
「師弟関係」
「作風」
「闘病中の歌」

この4題で人となりと作品、人生を紹介します。

歌人で「茂吉」といえば、日本歌人の最高峰・斎藤茂吉を思い出される方もおられるのでは?

山口茂吉は生涯を通じ、斎藤茂吉に師事した一番弟子。


2人の「茂吉」はいつ? どのように出会ったのか? いかに支え合いながら歌作りに賭け、紆余曲折を乗り越えたか ―― 文学史に残る二人三脚の師弟、その関係性も詳らかにされます。

ちなみに、冒頭でお伝えした「歌」。
「短歌/和歌」と呼ばれた時代はいつ頃だと思いますか?


答えは奈良時代(~793年)。
中世、中古を遡り、白凰や天平文化が花開いた頃です。


馴染み深い「短歌/和歌」という言葉を、当時の人たちも使っていて、それが連綿と続いてきた ―― 山口茂吉の短歌も、こうした悠久に連なり、はるかな歴史を感じさせてくれます。

展示される短冊は、多可町八千代区在住の書家・橋尾東堂(哲夫)氏によるもの。
こちらもご注目ください。

参考文献
現代語 古語類語辞典/芹生公男・編(三省堂)
てにをは連想表現辞典/小内一・編(三省堂)
字通/白川静(平凡社)

ミニ企画展『山口茂吉の歌』 展示の詳細

期間:2022年12月21日(水)~2023年2月12日(日)営業時間:9:00~17:00
定休日:毎週月・火曜日(ただし、第3日曜の週は、第3日曜日と翌月曜日)、祝日・年末年始
場所:那珂ふれあい館 兵庫県多可郡多可町中区東山539-3
TEL:0795-32-0685
WEB:http://web.town.taka.lg.jp/nakafureai/index.htm

那珂ふれあい館の情報

妙見山のふもとにある「那珂ふれあい館」。
東山古墳群※に隣り合う施設は、多可町の文化財調査や啓発、歴史学習の拠点です。

※東山古墳群の詳細ページ 
http://web.town.taka.lg.jp/nakafureai/jpg_img/shiteibunnkazai/link/higasiyamakohungun.html

館内のスペースに町内の出土品を展示するほか、1時間100円から利用できる研修室/体験学習室も併設。春は桜が見事です。

兵庫県立多可高等学校と桜並木

那珂ふれあい館 周辺の桜
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=3239662732930681&id=1612947158935588

「那珂ふれあい館」
http://web.town.taka.lg.jp/nakafureai/index.htm

兵庫県多可郡多可町中区東山539-3
0795-32-0685
営業時間 09時00分 ~ 17時00分
定休日 毎週月・火曜日(ただし、第3日曜の週は、第3日曜日と翌月曜日)、祝日・年末年始

那珂ふれあい館の記事一覧

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