兵庫県多可町鍛冶屋で2023年4月14日(金)、15日(土)、古民家をリノベーションした施設「Kaji家」(かじや/鍛冶屋477)のプレオープンイベントが開かれました。
Kaji家って?
Kaji家は3つのサービスを提供する施設。
1.カフェ
2.チャレンジショップ
3.宿泊
今回、「1.カフェ」が先行オープン。チャレンジショップと宿泊も順次、スタートするそうです。
Kaji家カフェ
メニュー:コーヒー(350円)、ジュース(350円)など。フード持ち込みOK。
営業時間:13時~16時
定休日:なし(チャレンジショップが始まると不定休になります。詳細はInstagramで)
産官学の連携でリノベーション
Kaji家の企画者は山崎栞さん(多可町地域商社RAKU)。多可町の地域おこし協力隊OGの彼女は、もともと古民家リノベーションを一つの目標に、協力隊の応募を行ったそうです。
「2021年、多可町が空き家協議会を実施して、多可町役場の定住推進課が推薦してくれたことで、私も参加できました。ここで会長を務めておられたのが、関西学院大学の清水陽子教授(建築学部 教授)。『空き家リノベーション事業を、学生と連携して実施することは難しいでしょうか?』とご相談したところ、ご快諾いただきました」
折しもコロナ禍で、大学の授業はオンライン。課外授業も出来なかったそうです。
「清水先生から、『リノベーションの企画やワークショップ、他学部の学生も一緒に参加させてほしい』とオーダーがあり、こちらも『ぜひ!』ということで、学部・学年を横断した51人が登録してくれました」
その後、学生はリノベーションの企画やプレゼン、計測、製図、さらには6回を重ねたワークショップなど、なんども多可町に足を運び、手を動かし、古民家を再生。一連の活動をポートフォリオにまとめ、大学院の進学を予定する学生もいるそうです。
多可町は、こうした動きを町の事業として推進。補助事業の申請やバックアップを始め、町の送迎バスを手配して学生を送り迎えしたり、鍛冶屋集落と地域商社RAKUをつないだりと、自治体ならではの役割で連携。
産官学のリレーションシップが利活用を実現させたそうです。
「面影がいっぱい」と喜ぶオーナーさん
プレオープンに、物件のオーナーさんがご来場。
「私たちが暮らしていた家が、こんな素敵な形で残るなんて」と感激されていました。
「昨年、この家の管理をどうするか、みんなで話し合ったんです。売るか、売れなければ更地にするか……売るとしても、買ってくださった方が地域に馴染んでくれるか? 集落のみなさんにご迷惑をおかけする結果にならないか……不安がいっぱいで。
そんなとき、多可町と地域商社RAKUさんが、利活用をご提案くださって、『それなら私たちも安心だな』と、お任せすることにしました」とオーナーさん。
―― 今日の、この光景って、どのように見えますか?
「懐かしいですね。この家、元々、お客様が多くって。母がお茶を淹れ、お客様と一緒に時間を過ごすこともあって……今日のこの光景、私が子供の頃によく見た感じがします。
ほんとに、ここを壊して、更地にすることも考えていただけに、まさか……こんな形で残せるなんて」
「家って、売れたらありがたいけれど、そうなると私たちはもう、足を踏み入れられないじゃないですか。今後、Kaji家は宿泊サービスを行うということで、昔、暮らしていた家に、また泊まれる。家族や孫を連れてくることもできます。それが嬉しくって……」とオーナーさん。
「集落の皆さんを始め、いろんな形に集まってもらえたり、使ってもらえたりする場所に蘇ったことも、嬉しいですね。そうそう、柱や梁、戸も、同じ形で残してもらって……面影がいっぱい。
2階の一角、私が子供の時に貼った壁紙も、そのままの形で残っていて、びっくりしました」
「お世話になった方々にもお会いできたし、もしかしたら今夜は夢のなかに、両親が会いにきてくれるかも(笑)」とも。
交流の場、利活用の実例 ~Kaji家が目指す姿
2022年春の起案から、1年越しでオープンしたKaji家。
チャレンジショップ&宿泊サービスの開始を控える山崎さんは、Kaji家のコンセプトについて、このように話します。
「企画段階から念頭にあったのは、入りやすい施設。町内外、いろんな人に、気兼ねなく遊びに来てほしい。さらに、ご来店いただくグループが、別のグループとコミュニケーションできたり、アイデアが掛け合わされたりするような空間を目指しています。和室の戸を空け、解放しているのも一例です」
また、「新築ではなく、空き家でなければならない理由」があったそうです。
「空き家の利活用には、2つの動機があります。
1つは、多可町に移住を希望する方に、空き家を使ったリフォームの実例や拠点整備の相場観を伝えること。2つ目は、多可町で空き家を所有するオーナーさんに、利活用の事例として紹介すること。
地域おこし協力隊として、たくさんのオーナーさんとお話をしてきましたが、『うちの家なんて使いようがない』とか、『あんなにボロボロじゃ売れないだろう』という声が多かったんです。
今までは『そんなことないんですよ』と、言葉で説明することしかできなかった。これからはKaji家をモデルに、使い方や物件の残し方、活用のご説明ができます」
お客様をお迎えする拠点として、空き家利活用の実例として、活躍しそうなKaji家。でも、「まだまだ完成形じゃないんです」と、山崎さん。
「ロゴマークを『カ』と『ジ』、2文字のカタカナをモチーフにしました。カタカナって、一説には、ひらがなと漢字の中間、『未完成』の文字。Kaji家も同じなんです。
町内では残念なことに、長く使われてきたり、歴史があったりする建具や家具が、つぎつぎに捨てられているんですが、ぜひ譲っていただいて、Kaji家に置きたいんです。もっと居心地がよくて、地域の伝統につながる空間に変えていきたい。
プレオープンに来てくれた学生も『別の形でKaji家に関わりたい』と言ってくれました。お客様の声を聞かせていただきながら、より良い形を目指します!」
Kaji家のスケジュールはInstagramをご確認ください。