変わり種もいっぱい! 旬の野菜を年間約60種、有機物質だけを使いながら栽培します。
祐尾智紗美さんは約10年間、世界をぐるりと歩いた旅人です。
「海外に行って、お金がなくなれば現地で働いて、それでもやりくりできなくなったら日本に戻ってバイト。貯めたお金でまた海外に行って」
そんな祐尾さんが旅先のいろんな農場で働いた経験や、その農家の家族・仲間と過ごした濃厚な生活から有機野菜づくりに目覚め、生まれ育った多可町で立ち上げたのが「農場なつめやし」です。
このページでは、そんな農場なつめやしさんの野菜づくりについて、詳しく伺います!
●農場なつめやしインタビュー
教えて、祐尾さん!
「農場なつめやしの野菜づくり」
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質問!
Q:農場なつめやしの安心安全野菜はどのような農法で育てられていますか?
Q:地元、多可町近隣で手に入る有機物資材だけを使い野菜を育てようと思ったのは、なぜですか?
Q:農場なつめやしさんがされている野菜づくりの難しさ、どんなところでしょうか?
Q:野菜を栽培するにあたって、多可町の風土・自然はどのように感じられますか?
Q:これから農場なつめやしさんみたいに野菜を育てたい人は、まず、どうするのがおすすめですか?
Q:農場なつめやしの安心安全野菜はどのような農法で育てられていますか?
A:肥料や堆肥、土作りには、自然環境に存在する有機物質だけを使う農法です。
土に混ぜるのはもみ殻や藁、野菜の枯れたところ。堆肥にしても、落ち葉やもみ殻、山土など、すぐ近くで手に入れられる有機物を発酵させて作ります。
化学的な肥料や農薬、薬品は使っていません。
Q:地元、多可町近隣で手に入る有機物資材だけを使い野菜を育てようと思ったのは、なぜですか?
A:それは土地とそこで暮らす人間にとって、自然な農法だから。農家の顔が見え、野菜一つひとつにストーリーがあるところも、うちの魅力です。
農薬を使った野菜がダメとは思っていないんです。
大量に作らなければならない農家や事業者は存在するし、害虫や動物に対策が必要な土地もあります。農法は環境や目的に合うものを選べばいいんじゃないかな、と。
それでも、私が農薬や化学肥料を使わず、地元で手に入る有機物資材で野菜を育てようと思ったのは、「身土不二(しんどふじ)
※の考え方、どう考えてもそっちの方が、人間にとっても自然なんやろなあ」と感じたからです。
※身土不二:「体と土とは一つである」とし、人間が足で歩ける身近なところ(三里四方、四里四方)で育ったものを食べ、生活するのがよいとする考え方。
たとえば多可町には、多可町ならではの気候や風土があります。ここで暮らす人には、この町で採れた野菜が馴染むはず。それが体の一部になることにより、心も体も生活も豊かになる。
多可町の土に種を蒔き、多可町で手に入る資材で作った堆肥を使い、できるだけ持続可能な農業を根付かせたいと思ったのは、こういった考えがあるからです。
物語がある野菜
農場なつめやしの野菜一つひとつには、ストーリーがあるんですよ。その上、作り手の顔が見えると、
「あの人が育てた野菜なんやなぁ」
「どんな味がするんやろ?」
「この野菜が育った裏には、こんな物語があるってゆってたな」
って、じっくり味わおうと思ったり、食卓での家族の会話も、もっと増えると思いませんか?
じっくり味わったり、味や感想を話してもらったりしたら、幸せな気分や時間が増えて、私がさっきから言っている「豊かな生活」につながるかなーと。
農薬を使わないので、採ってその場で食べられるとか、「自家採種」をしたら、種の管理ができるところもメリット。
自然を大事にする農法にはいいところがたくさんあります。
Q:農場なつめやしさんがされている野菜づくりの難しさ、どんなところでしょうか?
A:難しさより、農業の醍醐味を感じています。
栽培期間中、農薬や化学肥料を使わない農法は難しいと思われがちで、面と向かって「難しくないですか?」って聞かれることもあります。
私には……「難しい」という実感はないんです。たしかに、虫食いのリスクは高いし、寒くなったら暖かくしてあげたり、野生の生き物に食べられないようにしたりと、手間がかかります。
草取りもサボれません。かりに雑草が野菜の生育を邪魔しないとしても、草がぼーぼーではご近所の農家さんに迷惑がかかります。草やツタが野菜に絡まったら、収穫だって大変になります。
だから草を取ったり、雑草が伸びないような工夫をしたり、真冬でも健康に育つような環境づくりは欠かせないんです。
でも、すべては野菜作りに必要な工程。
なによりも、手をかければかけるほど、それに見合った野菜を育てられるのが農場なつめやしの農法。大変なこと、難しいことではなくって、農業の醍醐味、やりがいそのものを感じています。
Q:野菜を栽培するにあたって、多可町の風土・自然のよさを教えてください。
A:一番いいところは、野菜を栽培するのに必要な有機物資材が揃うことです。
多可町は米どころなので、もみ殻や米ヌカには事欠きません。また、畑のすぐそばに鶏ふんをもらえる場所があって、町内の醤油蔵から醤油かすもいただけます。
こないだは、こんなことがありました。
堆肥や苗床にしたくって、近所の山道で落ち葉をかき集めていたら、軽トラックが通りかかって。
運転していたおじちゃんが「その落ち葉やないと、あかんのか?」っていうんです。
私が「そんなことないです、この場所しか知らんから」と答えたら、「もっとええとこあるでぇ。教えたろ」と。
もちろん、見知らぬおじちゃんですよ(笑)
でも「落ち葉いっぱいあるから」って言うから行ってみたら、まさかのどっさり(笑)
シルバー人材で派遣された方々が、町内のあちこちで拾った落ち葉をまとめておく場所に連れていってくれたんです。
よく乾いた落ち葉、本当にありがたかったです。
人も、自然も最高!
多可町で農業ができて最高にラッキーやと思いました。
Q:これから農場なつめやしさんみたいに野菜を育てたい人は、まず、どうするのがおすすめですか?
A:小さくていいので、実際に畑をやってみるのはどうでしょう。
しっかり、でも自分のペースで野菜を育ててみたいなら、できればベテランに教わって、それを自分の畑に落とし込む、実践する。無理ない感じで、マイペースでいいと思います。
習得のスピードを上げたいなら、農家さんのお手伝い。やっぱり、お仕事でやっておられる方の農場は緊張感が違いますし、こちらも「貢献したい」という気持ちが強くなります。
畑やお手伝いが難しいなら、ホームセンターで買えるポット、プランターをお庭やベランダに置いて、自分が食べたいと思う野菜の種を蒔いてみること
から始めるのもいいですよ。
お子さんがいたら、野菜が育つ過程を楽しめたり、勉強にもなったりすると
思います。
「農場なつめやし」次の記事を読む → いずれはオリジナルの伝統野菜が誕生? 自家採種の役割、そして楽しさ
基本情報
農場なつめやし
オーナー:祐尾智紗美さん
多可町加美区山野部
取材:小迫悠香/黒川直樹
撮影・ライティング:黒川直樹
農場なつめやしの記事一覧
p1.10年かけて100カ国を歩いたら、生まれ故郷に辿り着いた ~農場なつめやし
p2.農場なつめやしの安心安全栽培って、どんな農法?
p3.いずれはオリジナルの伝統野菜が誕生? 自家採種の役割、そして楽しさ
p4.タカラバコ? 野菜作りで人との距離が近くなり、世界が変わった