神主が本殿から酒を撒くと、「うばらばら! うばらばら! うばらばら!」 ―― 声を発する氏子が、シキミの枝を振り上げます。
下三原の伝統行事「雨散散」
多可町八千代区下三原の貴船神社で1月1日、伝統行事「雨散散」(うばらばら/ゆうわらわら)が行われました。
「雨散散」は雨乞いと五穀豊穣を祈年する行事。
起源は江戸時代。下三原で干ばつが続き、町民が八幡大菩薩に雨乞いを始めたそうです。
日本各地の雨乞い
雨乞いには型があり、日本では5つに分けられるそうです。
1.山頂で火を焚く
2.唄や踊りで神意を慰める
3.神仏を怒らせる
4.神社に籠もって祈願する
5.神水を耕地に撒く
「うばらばら」と声を発し、御神酒が撒かれる「雨散散」は、2と5の複合でしょうか。
3には、地蔵を縄でしばって川につけたり、淵に牛馬の内臓を投げ込んだりと、ハードなものもあるのだとか。
ここまでくると、雨で済みそうにありませんが……
タイには「仏像を野天に置き、燃える太陽にさらす」タイプの雨乞いも。
その心は……?
「仏に不自由を思い知らすため」。
強っ!
参考文献:『文化人類学事典』弘文堂
滴よつけ、たくさんつけ~~
さて、多可町八千代区下三原の「雨散散」ですが、木椀や木匙など伝統的な道具が用いられ、シキミやかずら、さかきは、下三原の「しきみ山」から採取。神主※が準備するそうです。
採り置かれたシキミ、かずらの細工や水引きつけなどの飾りは、参列する氏子が行います。
※神主はお当※の2人が務める。
※お当(おとう)
町内で祭事を司る役のこと。
ふるくは「お頭」と書かれ、長男が一生に一度務める名誉だった。
時代とともに、くじ引き制度で決まったり、順繰りの交代制・複数人制になったりと変化。
現在は、「お当渡し」を期に交代し、一年間、神社の清掃や祭りの進行などを行う。
「シキミの飾りつけ」
シキミ:1本(大人の腕くらいの長さ)
藤かずら:3つの輪にし、鎖を作り、シキミに下げる
洗米と水引き:洗米を半紙でくるみ、水引きでシキミ、藤かずらにくくる
氏子は飾ったシキミを手に、本殿に集まります。
神主が廻り縁に立ち、「お祝い申す」と言いながら御神酒を振り撒くと、氏子が一斉に「うばらばら」。
これを3回、繰り返します。
御神酒の滴がシキミにいっぱい付くと、ご利益が大きいのだとか。
御神酒のふるまいのあとは、新旧の神主4名が、4つの木地椀に盛った御供さんを氏子に配布。
これを期に、神主(お当)も交代です。
たかテレビ、広報たか、神戸新聞の取材もあり、一層にぎやかな「雨散散」になりました。
(取材日:2023年1月1日)