北はりま森林組合 ~森のアベンジャーズ

2021年12月、ラベンダーパーク多可で開催した写真展「多可町の森の人」のモデルを紹介するページです。展覧会に展示できなかった写真とテキストをアップしています。

大怪獣みたいな重機をバディに

多可町加美区に拠点を置く、北はりま森林組合さん。

多可町のみならず、加西や加東、西脇、三木、小野、加古川など広範囲の森林を管理されています。

 




また、木材の販売や間伐材を利用したチップの製造、公園や芝生の管理・保全なども業務の一環です。

現在、事務所に詰める職員が15名、現場に出る職人は22名。ここにシニアスタッフ10名と外注の職人・約20人を加え、強い山づくりに尽力されています。


 



多可町の木々は県内でも珍しく、「定性間伐」されています。

「定性間伐」とは、木々、一本一本の特長や状態を鑑み、将来有望な木を残す方法です。手間がかかる分、木の成長を助け、森・山の状態の向上を助けます。


 



県内の多くの森林は「列状間伐」※という、短期的な生産性と作業効率を優先した伐採スタイルで切られているそうです。

多可町は手間暇をかけ、良木を育てきたことが、この伐採スタイルからもわかります。

※列状間伐:定めた区画の木々を全て切り倒す伐採方法


 

365日生きる切り株




「切り離した切り株は1年間ほど生きています。

切られた株の根は、水を吸い上げる必要がなくなったと感じ、土の中でゆっくりと時間をかけて腐り萎んでいきます。できた隙間に雨が流れ込み、腐敗が進むことによって微生物が発生します。

その微生物が土壌分解者となって土を耕し、そこに染み込んだ水が栄養たっぷりのミネラル水となり、川に流れ出る。

川では生物多様性の動植物が発生し、栄養価の高い水が海に流れ出ます。河口付近ではプランクトンが発生し、海に豊かな生態系のクラスターが生まれる。沿岸や沖合漁業が活気づくんです。

多可町の山もまた、播磨灘につながっています」



 

山に道をつける



人手が入らない繁みを整備するため、山に道をつけるのも北はりま森林組合さんの業務。


 



こんな斜面でも、職人さんは「ここが獣道ですね」とあたりを付けて奥に、奥にと進みます。

もちろん、素人には獣道なんて見えません。それどころか、踏めば地面がぼろぼろと崩れ、転げ落ちそうな恐怖にすくみ、一歩足を出すことさえ躊躇われる始末。

職人さんはこちらを振り返り「気を付けてくださいねー」と微笑んでいます。そして、手足に吸盤がついていたとしても、疑えないほど颯爽と、勾配を見事に登ります。

ここで、どでかい重機の出番です。


 




人が暮らす多可町の山


切り出された木々はトラックに積まれます。

 



ここでも見事に操縦される重機。

見てください、トラックの荷台に並ぶ木々の並び。

手で運び置いたって、こんなに整列しないのではないでしょうか?



「多可町の山は、人間の暮らしと共に変化してきたんです。加美区にしても、山の上のほうまで集落があるでしょう? あれは、そこまで人が行って暮らした結果です。日本中の田舎が同じような環境ではありません。

例えば四国のある山奥。そこは多可町と似たような景観ですが、集落の奥の方、上の地域は道が整備されていないし、狭い国道を車が行き来しています。事故の危険と隣り合わせです。

多可町の場合、そんなことはありませんよね。加美の奥の集落にしても、道は走りやすいし、田んぼの四方がアスファルトで区画整備され、耕しやすい。災害対策も施されています。

そういう面からも、多可町の山は人が暮らし、自然とともに生きる環境が作られてると言えるんです」


記事中の語り/北はりま森林組合 藤田和則参事

取材・撮影:黒川直樹

北はりま森林組合

兵庫県多可郡多可町加美区豊部1922-4
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FAX 0795-35-1174
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